シーシェパード環境保護団体(Sea Shepherd Conservation Society、通称シーシェパードまたはSS)は、海洋生物保護のための直接行動を掲げる国際非営利組織の海洋環境保護団体[1][2]。本部はアメリカ合衆国ワシントン州フライデーハーバー(Friday Harbor)。「シーシェパード」は「海の番犬」[3]、「海の保護者」[4]の意。
国際環境保護団体グリーンピースを脱退したカナダ人、ポール・ワトソンが1977年に設立した。アイスランドやノルウェーの捕鯨船を体当たりで沈没させるなど過激な行動で知られ、2005年からは南極海での日本の調査捕鯨を妨害するようになった。反捕鯨に共鳴する欧米の資産家や著名人らに支援される一方で、暴力的な手段をいとわない過激な活動を展開することから、日本の捕鯨関係者からエコテロリストと呼ばれることもある[4][5][6][7]。また、日本[6][8]、アメリカ[9][10]、カナダ[11][12]の各政府からテロリストと名指しされたことがある。
活動歴
日本以外への抗議活動と犯罪行為
- 1980年、マッコウクジラの捕獲一時停止への反対票をカナダの代表が投じたことで「彼等を殺す」とポール・ワトソンが脅迫、これによりカナダ政府は自国の警察を派遣し代表を保護している[13]。
- 1983年、カナダ警察が乗り込んだ際、舟のデッキの周りに電気ワイヤーをはりめぐらせた17人が逮捕される。ポール・ワトソンら3名が逃走するも逮捕[13]。
- 1986年、デンマークのフェロー諸島にてライフルを使用して捕鯨船のゴムボートを沈めようとし、フェロー諸島の警察にも発砲、同海域にいた、同団体の船舶はフェロー領海から退去命令を受ける。また、三価リンを含む信号照明弾を警察に投げつけたり、ガソリンを警察の船に散布、ガソリンに火が付くように信号照明弾を投げつけた[13]。
- 1986年、アイスランドの鯨加工工場を爆破し破壊した。
- 1993年、ノルウェーの捕鯨船を浸水させる。
- 1993年、日本の漁船に銃弾1発を発砲している[13]。
- 1999年、ワシントン州のアメリカ・インディアン部族、マカー族が70年ぶりに捕鯨を再開。マカー族の領海を侵犯し、彼らの手漕ぎのカヌーに対してモーターボートで威嚇を行った。ケン・ニコルズはマカー族部族警官の制止を振り切って暴れ、部族警官に拘束された(詳細とその他のマカー族への妨害はマカ族#マカー族の捕鯨も参照)。
- 2007年9月8日、マカー族のカヌーによる捕鯨を領海を侵犯して威力妨害した。
- 2008年1月、カナダでオットセイを捕まえようとした調査船を妨害したとして、カナダ警察にメンバーが逮捕される。
- 2008年4月、 カナダ沿岸におけるアザラシ猟の妨害活動中に、「許可証なくアザラシに近づいた件」および「警備船に衝突した件」で、ファーレイ・モウワット号が拿捕。船長及び一等航海士が逮捕。後に罰金刑となる。
日本の捕鯨に対する抗議活動と犯罪行為
1979年
- ポルトガル沿岸で、船首に100トンのコンクリートを取り付けたシーシェパード1世号で海賊捕鯨船シエラ号(Sierra)を180マイル追跡し、Leixões沖で二度にわたり体当たりし大破、航行不能に陥らせた[14]。シエラ号はキプロス船籍ではあるものの、日本の大洋漁業とノルウェーのFöreningsbankenの共同所有であり、ノルウェー人船長と日本人乗組員の下、国際捕鯨委員会による規制を逃れて操業し、鯨肉を日本の国内市場で流通させていたためターゲットとなった[15]。翌年、修理された同船はリスボン港に係留中に何者かによって爆破、沈没させられた。ポール・ワトソンはすでにポルトガルを離れていたが、「これでシエラ号はもう捕鯨できないだろう。われわれはシーシェパード号のためにやったのだ」という匿名の声明文がUPI通信社に届けられた[15]。
2005/2006シーズン
- 南氷洋において、抗議船ファーレイ・モウワットが調査捕鯨を行っていた日本の捕鯨船に体当たりした。これに対して、オーストラリア環境相とニュージーランド環境相が、暴力的な抗議手法を非難した。
2006/2007シーズン「Operation Leviathan(リバイアサン作戦)」
- このシーズンから日本の南氷洋での調査捕鯨への抗議活動に関してシーズン毎に作戦名をつけるようになった。
- 2007年
- 2月9日、調査捕鯨母船日新丸に対して抗議船2隻を接近させ、直撃すれば失明する恐れのある有害の化学物質である酪酸入りの瓶を投げ付けた。乗組員のうち1人は瓶の破片で、もう1人は液体が目に入り、船内で治療を受けた。尚、日新丸のスクリューに縄を絡ませようとした高速ボートが接近しすぎ沈没、オーストラリア人とアメリカ人の活動家2人が行方不明となった。 水産庁によると、同団体は妨害活動を中止し、約3時間後に日本側に救助要請。日新丸も救助活動に参加、連絡が途絶えてから約7時間後に同団体が、不明の2人を救助した。ジョニー・バシック会長はこの件に関し、「日本の捕鯨船には感謝しているが、今後も妨害活動は続けるつもりだ」と語った。
- 2月12日、抗議船を日本の目視調査船海幸丸に衝突させる。同団体は、海幸丸が抗議船を回避しようとして別の抗議船に衝突したと主張。その後、海幸丸はスクリューが破損したと訴え、遭難信号を出した。ニュージーランド当局も遭難信号を確認した。一方、抗議船は船体を損傷したが航行に支障はない。このことに関し、同団体のワトソンは、オーストラリアおよびニュージーランド当局が全力で捕鯨をやめさせるとの保証が得られるなら引き揚げると述べる一方、捕鯨妨害のため抗議船を捕鯨船の船尾に衝突させる(スクリュー、舵などの破壊の為)ことも辞さないと警告した。捕鯨船日新丸は、同年2月15日に船内において火災が発生し、乗務員である27歳の男性が焼死するという事故が発生した。
2007/2008シーズン「Operation Migaloo」
- このシーズンからアニマルプラネットの『Whale Wars(鯨戦争)』の番組スタッフを同行させ取材させるようになった。
- 2008年
- 1月15日、日本の目視採集船第二勇新丸に対し酪酸瓶を投げつけ、ワイヤーをスクリューに絡ませようとした。同日、同団体の活動家2名が同船船内に不法侵入し拘束された。不法侵入者2名は同月17日オーストラリアの船に引き渡されたが、同日中に別の調査船に酪酸瓶で襲撃した。
- 3月3日、スティーブ・アーウィン号が、捕鯨船日新丸に100本以上の酪酸瓶を投げつけるなどの襲撃を行い、海上保安官2名と捕鯨船員2名に軽症を負わせた。小野寺五典外務副大臣は、同団体が船籍を置くオランダの駐日大使を外務省に呼んで抗議した。同省の小田部陽一経済局長は、同団体の船が実質母港としているオーストラリアの駐日大使を呼んで抗議した。これら日本側の抗議に対して、オーストラリア政府は一切応じないことを発表した。
- 3月7日、スティーブ・アーウィン号が、捕鯨船日新丸に4回にわたって異常接近し酪酸瓶を投げつけ、海上保安官が手投げ式音響警告弾を投擲し警告した。ポール・ワトソンは、この音響警告弾に関して、あらかじめ防弾チョッキに仕込んでおいた銃弾を用いて「捕鯨船に銃撃を受けた」と同乗したテレビクルーにアピールした。
- 3月9日、国際捕鯨委員会(IWC)において、全会一致で同団体の暴力行為に対する非難声明が採択された[16]。
- 8月18日、警視庁公安部は、2007年2月の妨害行為の件で威力業務妨害容疑で同団体のメンバーであるアメリカ国籍とイギリス国籍の男性ら3人の逮捕状を請求した。警察庁は国際刑事警察機構を通じて国際手配する[17]。
2008/2009シーズン「Operation Musashi(ムサシ作戦)」
- 2009年
- 1月6日、調査捕鯨船が行方不明の乗組員を捜索する為に発信した救難信号で居場所をつきとめ、無灯火で近づき衝突を試みたが調査船に回避された。同団体は即座に行方不明者の捜索への協力と弁解したが、調査捕鯨船から無灯火の航行、他船への意図的な異常接近などの不法行為を指摘されると、行方不明者を捜索中の調査船団に対し、約4時間にわたって幾度も衝突を試み、執拗に行方不明者捜索の妨害をおこなった。また、日本側の同団体対策として人間に不快な周波数の音波を放射する音響兵器が使用された。同団体は、この装置により、妨害活動に集中することが困難になったことを認めざるを得ないとの声明を出し、日本側の同団体対策が功を奏したことが明らかになった[18]。
- 2月6日、スティーブ・アーウィン号が第三勇新丸の左舷後方に船体を激しく衝突させて押し続け、第三勇新丸の船体が大きく傾き非常に危険な状態となった[19][20]。
2009/2010シーズン「Operation Waltzing Matilda(ワルチング・マチルダ作戦)」
- 2010年
- 1月6日、妨害活動を行っていた、同団体のアディ・ギル号と日本の監視船第2昭南丸が公海上で衝突する。アディ・ギル号が進路に割り込んできたという第2昭南丸側の主張に対し、完全に停船していたところにぶつかってきたと同団体は主張した。アディ・ギル号は船首部分が大破し船員の1人が肋骨を折ったが、第2昭南丸側の船員に被害はなかった。第2昭南丸は同団体に対する監視船で、捕鯨船は別行動のため日本の調査活動には影響はなかった。同団体はこの事件の直前まで、ロープを使用した危険な航行妨害や、異臭を放つ袋を甲板に投げ込む、目に当たれば失明のおそれがあるレーザー光線を照射する[21] などの直接的な攻撃行動を行っており、第2昭南丸側も放水などでこれに対抗していた。事件後、同団体は証拠として衝突の瞬間のビデオを公開し、オーストラリア政府に海軍による保護を要請したが受け入れられなかった。これに応じる形で第2昭南丸側から撮影されたビデオも、財団法人日本鯨類研究所の公式ホームページより、条件付きコピーレフトで公開された[22][23]。
- 同日、日本側が、ボブ・バーカー号が国連海洋法条約に違反し船をノルウェー船籍に偽装しているのを発見した。ボブ・バーカー号は日本の捕鯨船日新丸の進路を妨害したほか[24]、その後も異常接近・緑色レーザー光線の照射などの妨害行為を行った[25]。日本政府は、捕鯨船団が撮影した写真やビデオ映像をノルウェー政府に提供。これを受けてノルウェー外務省は、同日までに同団体に抗議文を送付した。船籍を偽造した理由について、ワトソン船長はボブ・バーカー号を捕鯨国の船と誤解させ、日本捕鯨船への接近を容易にしようとしたなどと説明した。
- 1月7日、オーストラリア政府は、ニュージーランド政府と共に海上保安当局が船舶衝突の実態解明調査を行うことを表明した。
- 1月8日、同団体は「海賊行為」の疑いで、監視船第2昭南丸の乗組員をオランダ司法当局に告訴した[26]。
- 同団体の公式発表では、アディ・ギル号は沈没したとされたが、同団体の小型船によって曳航された後にロープが切れ、放棄されて海上を漂う。船内には殺傷能力のある長さ80cmのクロスボウの矢4本が放置されており、また船体からは重油らしきものが流出していたのが確認された[27][28]。
- 2月6日、同団体はノルウェー政府の警告を無視し、再び船籍を偽造。同日、悪臭を放つ酪酸の入った瓶を「第3勇新丸」の甲板に投げ込む際に同船と衝突した[29]。
- 2月9日、ワトソン代表は南極海での捕鯨妨害の次は、地中海でクロマグロ漁の妨害を行うと宣言した。なお、日本人女性がスティーブ・アーウィン号に乗船している[30]。
- 2月10日、捕鯨船日新丸に対して、酪酸弾をロケットランチャーで発射、数人が負傷する。
- 2月12日、監視船第2昭南丸に対してロケット弾を発射し、デッキにいた乗組員3人が酪酸の飛沫を顔に浴びるなどして負傷する。
- 2月15日、アディ・ギル号の元船長であるピーター・ベスーンが、水上オートバイで監視船第2昭南丸に接近して、船内に侵入した。その際に、手紙を船長に渡す為に持っており、「船長を逮捕しに来た、アディ・ギル号の立て替え金300万ドルを支払え」などと書かれていた。その後、現行犯逮捕された。
- 2月21日、捕鯨船日新丸に対し、約20分間レーザー光線を照射し、同船の調査を妨げる[31]。
- 3月12日、第3管区海上保安本部東京海上保安部が、アディ・ギル号の元船長ピーター・ベスーンを逮捕した[32]。
- 4月2日、東京地方検察庁がピーター・ベスーンを艦船侵入罪、傷害罪、威力業務妨害罪、銃刀法違反罪、器物損壊罪などで起訴した[33]。
- 4月30日、海上保安庁が「一連の犯罪行為を指揮していた疑いが強まった」として、傷害、威力業務妨害、器物損壊などの容疑でポール・ワトソンの逮捕状を取得した。
- 6月23日、国際刑事警察機構(ICPO)は日本の要請を受けてポール・ワトソンを国際指名手配した[34]。なお、国際手配と言っても、「犯罪に関連していないか追加情報の提供を求める」であり「即時の逮捕・拘束を求める」ではない。
- 7月7日、東京地方裁判所は、ピーター・ベスーンの全ての罪状を有罪とし、懲役2年、執行猶予5年(求刑懲役2年)の判決を下した。ニュージーランドへ強制送還された[35]。
- 10月8日、本事件の一連の裁判の後になって、アディギル号の元船長であるピーター・ベスーンが、日本の調査捕鯨船団の監視船「第2昭南丸」と衝突、沈没したのは、ポール・ワトソン代表の指示による自作自演の沈没だったことをラジオ・ニュージーランドで暴露した。元船長は、「高速船は衝突後、えい航可能な状態だったが、(沈没したと発表すれば)『世の同情を買い、テレビ映えする』として、わざと放棄、沈没させるようワトソン代表に指示された」と語った[36]。また「Facebook」上で、同団体とリーダーのポール・ワトソン船長を「不正直」で「道徳的に破綻」していると非難した。また、「故意に情報操作を行ったりウソにまみれた団体の一員であることは、もはや耐えられない」「毎月、何らかの大ウソが流されるのを見て、彼らの悪辣さに気づいた」「ウソは日常茶飯事で、重大なウソはみんなで示し合わせる」「衝突事件は自作自演」と暴露して、脱退することを明らかにした[37]
- ニュージーランド海事当局によるアディ・ギル号と第2昭南丸の衝突事故の調査結果
- 2010年11月、ニュージーランド海事当局は、同年1月6日に発生した衝突事故の原因を究明した調査報告書[38]を公表し、衝突の責任は双方にあり、どちらかが意図的に事故を引き起こしたという明確な証拠はなかったとした[39]。産経新聞によると要点は以下のとおり。
- アディ・ギル号はニュージーランド海事当局の警告を振り切って出航していた。また、同船が寄航したオーストラリア海事当局も同船の設備調査を徹底せずに出港を許可していた[39]。
- 事故当時、船舶免許をもたないクルーが運転していた[39]。
- 第2昭南丸が救難信号に応じなかったという同団体の公式発表は虚偽であることが判明した[39]。
- アディ・ギル号の船員が事故で骨折したとの報告は、診断結果が出ないまま、ポール・ワトソンが、吹聴していたことが判明した[39]。
- アディ・ギル号の航行軌跡を残した記録装置を海に投げ捨て、証拠隠滅を図ろうとしていた疑惑が判明し、ニュージーランド海事当局の追及に、同団体は、記録装置が海に投げ捨てられたことを半ば認めた[39]。
- 一方、第2昭南丸は針路方向にアディ・ギル号が航行していることを把握しながらも、そのまま方向転換せずに突進。衝突地点の130メートル手前では、さらにアディ・ギル号の方へと右舷に舵を切っていたことが判明した。この直前の針路転換については、アディ・ギル号を第2昭南丸の放水砲の射程圏内に入れる必要があったためだと推察した[39]。
2010/2011シーズン「Operation No Compromise(妥協なき作戦)」
- 2011年
- 1月1日、南極海で活動中のクジラを捕獲する捕鯨船、第3勇新丸に対し、スティーブ・アーウィン号とボブ・バーカー号に搭載された小型ボートが、第3勇新丸に瓶を投げつけたり、ロープでスクリューに絡ませようとしたり、約1時間妨害した。これに対して第3勇新丸は、警告放送、警告放水で応戦した。[40]。
- 1月5日、第3勇新丸に対し、ゴジラ号で接近し、ロケットランチャーで着色弾を撃ち込んだり、瓶を投げつけたりして、約1時間40分にわたり、妨害した。また、スティーブ・アーウィン号からヘリコプターを飛ばし、妨害の様子を撮影した。[41]
- 1月6日、第2勇新丸に対し、スティーブ・アーウィン号の小型ボートで接近して、刺激臭の瓶を投げ、第2勇新丸に当てたり、金属製ロープをスクリューに投げ入れたりして3時間近く妨害した。[42]
- 1月9日、第2勇新丸に対し、ボブ・バーカー号の2隻の小型ボートで接近して、発光弾や発煙筒を投げ、甲板の一部が焼けたり、ネットにフックをかけようとしたり、40分間近く妨害した。[43]
- 1月30日、第3勇新丸に対し、ボブ・バーカー号の小型ボートから発煙筒を当てたり、ロープを投げるなど、1時間近く妨害した。[44]
- 2月3日、第3勇新丸に対し、ボブ・バーカー号の小型ボートから10本以上の酪酸瓶を投げて当てたりしてゴジラ号は航路を妨害した。
- 2月4日、第3勇新丸に対し、ボブ・バーカー号とゴジラ号から着色弾を発射したり、100本以上の酪酸瓶を投げて当てたりした。また、投げ入れたロープがスクリューに絡まり、航行速度が遅くなるなど航行に支障が出たため、一時、救難信号を発信した。妨害は約5時間続いた。[45]
- 2月9日、クジラを解体して持ち帰る捕鯨船の母船、日新丸に対し、ゴジラ号で接近しロープを引っ張るなどして進行の妨害、酪酸瓶と発煙筒と落下傘信号弾(炎を発しながら落下してくる)の投げ入れ、レーザー光線照射などの妨害行為をおこなった[46]。
- 2月10日、日新丸は、激しい妨害や追尾をされており、火器による妨害で乗組員の安全確保が出来ない為に調査捕鯨を一時中断した。また、捕鯨活動が出来なかったり、ロープの妨害による船の立ち往生の危険性もあった。[47]
- 2月11日、日新丸に対し、ゴジラ号が、緑色のレーザー光線を照射し妨害した[48]。
- 2月18日、日本政府は4隻の船団で3月中旬まで調査捕鯨を行う予定だったが、激しい妨害と日新丸が追尾を振り切れない状態が続いており、さらに、同団体が、もう1隻の妨害船を派遣する動きを見せた為に乗組員の生命、財産、調査船の安全を確保する為にやむをえず中止とした[49]。妨害による調査捕鯨の中止は初めてとなり、今季の捕獲頭数は172頭で、予定の900頭を大きく割り込んだ[49]。一方、ポール・ワトソンは「一頭一頭のクジラを救うことが勝利だ。これはわれわれにとって大きな勝利だ」と述べ[50]、「妨害は1月には7割、2月はすべての捕鯨を妨害した。南極海でこれ以上捕鯨を許さない」と声明を出した[51]。グリーンピースジャパン事務局長佐藤潤一によると、調査捕鯨を中断したのは妨害活動以外にも理由があり、有り余る鯨肉在庫の一掃を狙った生産調整もそのひとつだという[52]。
2011/2012シーズン「Operation Devine Wind(神の風作戦)」
- 2012年
- 1月4日、ボブバーカー号の2隻の搭載ゴムボートが、第三勇新丸の航行を妨害するために、ロープ、ワイヤー、ブイを曳航しながら30回以上第三勇進丸の船首直前を横切るなどの妨害活動を行ったと水産庁が発表した[53]。
- 1月6日、水産庁に入った連絡によると、同上のゴムボート2隻が再度第三勇進丸に対して同様の行為を行ったほか、発炎筒を3本投擲した[54]。
- 1月6日、シーシェパードと行動を共にしている「フォレスト・レスキュー」の活動家3名が、シーシェパードのゴムボートを使って第二昭南丸に侵入して拘束された。その後3名はオーストラリア税関船に引き渡されたが、これについてギラード豪首相は同活動家達の行動を批判し費用の支払いを請求した[55]。
- 1月11日、スティーブ・アーウィン号の2隻の搭載ゴムボートが、第二勇進丸の船首直前にロープを投入し、酪酸と塗料の入ったビンを20本以上投擲し7本が第二勇新丸船内に着弾したと水産庁が発表した[56]。
- 1月18日、水産庁によると、同上のゴムボート2隻が、第二勇進丸の船首直前にワイヤーや鉄塊が付いたロープを6回投入したり、ロープに繋がれた鉄製のかぎ爪を第二勇進丸に投げつけ、ランチャー等で塗料の入った瓶を30本以上投擲し、第二勇進丸の乗組員2名がこれを浴びた。さらにゴムボートは第二勇進丸の舷側に接近し、船体側面の乗り込み防止用フロートのロープやネットをナイフで切断し、フロート1個を持ち去った。これに対して第二勇新丸の乗組員は放水と竹竿で対抗し、シーシェパードによるとカメラマンを含む3人が切り傷や打撲を負ったという[57]。
- 1月21日、水産庁によると、同上のゴムボート2隻が第二勇進丸に対してランチャー等を使って酪酸や塗料の入った瓶を投擲した。第二勇新丸側は放水などで警告した[58]。
- 2月11日、水産庁によると、スティーブ・アーウィン号から降ろされた小型ボート3隻とジェトスキー1台が、第二勇新丸の船首直前にロープを投入し、発炎筒、数十本の塗料瓶や酪酸瓶を投擲し、空気銃で刺激性物質入りの弾を発射した。これにより第二勇新丸のスクリューにロープが絡まったものの航行に支障はないという[59]。
- 2月12日、水産庁によると、同上のゴムボート2隻が、第二勇新丸の船首直前にワイヤや鉄管付きロープを投入し、5本の発炎筒、20本以上の塗料瓶や酪酸瓶を投擲した。ロープは第二勇新丸のスクリューに絡まり速力が低下した。第二勇新丸は警告するために放水を続け、接近防止用に投げ込んだブイのロープはナイフで切られたという[60][61]。
日本のイルカ漁に対する抗議活動と犯罪行為
- 1982年
イルカ漁に抗議するためにシーシェパード代表のポール・ワトソンが訪日。イルカ漁を止めれば1頭につき100ドルを支払うが、止めないならばシー・シェパード2世号を自沈させて港を封鎖すると脅したが[62]、長崎県壱岐で県水産部次長と話し合いをもった結果、漁民はイルカを積極的に捕獲しているのではないという説明に納得して何もせずに帰った[63]。
私の息子は学校のトイレを使用することはありません
- 2003年
- 2003年、太地のイルカキャンペーンの一環として、和歌山県東牟婁郡太地町のイルカ漁に用いる網を切断する。これにより、同団体のアメリカ人とオランダ人のメンバー2名が逮捕された。2名は23日間拘束され、略式起訴の後、罰金30万-50万円の略式命令を受けた。また、同団体の公式ホームページに漁業関係者や県知事の住所、電話番号を日本語で掲載し、抗議の手紙、電話を送るよう推奨している[64](活動の手法参照)。
- 2010年
- 9月3日、マイケル・ダルトンが、イルカ漁を妨害する為にメンバーを和歌山県東牟婁郡太地町に送りこんだ事を明かした。今後さらに20〜30人を派遣し、他の動物保護団体も合流する見通しと語った。また、定期的に、同団体のウェブサイトやYouTubeで、太地町での抗議活動を報告している。
- 9月13日、太地町の畠尻湾に、支援者とメンバーで幹部でもある、元警察官スコット・ウエストとその妻と娘らが訪れ、イルカの仕分け作業を撮影した。これに対して同団体に反発している保守系団体が街宣車で抗議した。また、2011年2月5日放送された日本の番組で、スコット・ウエストは「漁師達をいじめてるよう見える、どうしてするのか?」との問いに対して「楽しい」と笑いながら答えた。[65][66]
- 9月27日、シーシェパードのメンバーでもあるザ・ブラック・フィッシュのメンバー3名が、捕獲されているイルカを逃がそうと生簀の網を切断して犯行声明を出した後、国外に逃亡した。しかしこれにより逃げ出したイルカはいなかった。
- 10月12日、太地町で、午前5時頃に、メンバー、支援者ら外国人10人が、イルカ漁に出ようとする漁業関係者に中止するよう詰め寄り、警察が出動し一時騒然となり、その後は排除された。メンバーは「きょうない、この漁。赤ちゃんがいる、ベイビーイルカ。妊婦さんのイルカ。獲ったらおかしい」となどと抗議した。[67] また、スコット・ウエストが、「滞在の目的はこの入江に注目を集めることです。毎日報告することで、この事実を全世界に知らしめることができるのです。長期的にはイルカ漁をやめさせるのが目的です」とし、さらに、活動資金の為に太地町滞在している事も認めた。[68]
- 10月14日、太地町で、イルカ漁への抗議を世界各地の日本大使館前などで行おうとアメリカの反イルカ漁団体のsave japan dolphinsが、発信した呼びかけを受け、メンバーと支援者が太地町長への面会を求め、太地役場に押しかけて職員や漁業関係者と押し問答となった。当然、門前払いされ、全く相手にされなかった。その後、スコット・ウエストと支援者は、米と酒を捧げることで漁師たちが犯した罪の償いだとして、入り江にバラの花や米、日本酒を海に撒いた。[69]
- 11月2日、シーシェパードなどの反捕鯨団体と太地町側との間で初の意見交換会が行われた[70][71]。反捕鯨団体側は、太地町側に度々、面会を申し入れていたが、町側は再三にわたり拒否していたため、「町の立場を説明すべきだ」として、シーシェパードと交流のある県内の漁業組合や政治家で作る新宮市の民間団体「太地町のイルカ漁を考える会」が両者の間に入る形で主催した[71][72][73][74]。開催の経緯について、太地町のイルカ漁を考える会会長の中平敦(地元の政治結社『日本世直会』の代表でもある)が中日新聞記者の吉岡逸夫に語ったところによると、当初、中平とシーシェパード幹部のスコット・ウェストはテレビ局を引き連れて和歌山県庁に抗議に行く予定であったが、太地町町長の三軒一高が「それなら自分が会う」と言ってきたために意見交換会が実現したという[75]。AP通信や中東の衛星テレビなど[76]、国内外合わせ、100人以上の報道陣が詰め掛けたが、主催者側が取材申し込み時に問題があったとして朝日新聞、毎日新聞、産経新聞など一部報道機関の入場を一方的に拒否[77]。これに抗議して、出席予定だったザ・コーヴの出演者リック・オバリーは参加をボイコット、「町長側がメディアの自由な報道に規制をかけた」と訴える声明文を会場入り口で報道各社に配った[77]。反捕鯨団体側からはシーシェパードのウェスト、ホエールマン・ファンデーションのジェフ・パンタコフら3団体の5人が、太地町側からは三軒町長、漁野伸一副町長、三原勝利町議会議長、大隈清治くじらの博物館名誉館長、漁協幹部ら8人が出席したが、通訳を介していることもあり激しい議論とはならず、議論は平行線で終わった[77][78]。入場を拒否された報道機関は、会場周辺で終了を待ち、会を終えて出てきた出席者を取り囲んで取材した[78]。意見交換会終了後、所用があった三軒町長以外の漁野副町長、三原議長、杉森宮人・町漁協参事ら5人の出席のもと役場会議室で会見が行われた[79][80]。また、それまで取材や対話を拒んできた太地町漁協は意見交換会後、初めて公式にコメントを発表した[81]。
- 意見交換会におけるシーシェパードの主張
- ウェストは、「伝統と文化に対しては理解している。長く続いているからいいというものではなく、もう続けてはいけないものがあることも理解しなければならない。奴隷制度のように、時がくれば終わらせなければならないものがある」と主張した。また、「太地町の一握りの活動が日本の名誉を傷つけている」と主張した[78]。
- 「いつになったらイルカ漁をやめるのか」とし、「太地町がより良い方へ進むために何かできないか」と主張した[82]。
- 記者に「シーシェパードはどうして町側と話し合わず、暴力的な振る舞いをするのか」と問われ、「私は毎日現地に行っているし、だれとでも話し合う用意はある」と回答した[78]。
- 寄付を集めてイルカを買い取ることを提案した[83]。
- 意見交換会における太地町側の主張
- 太地町側は、「太地町民が決めること。一方的な価値観を押し付けないで」とし、「捕鯨は生活の糧。地域の食文化について不毛な議論はしたくないが、必要に応じ理解を求めていきたい」と反論した[82]。
- 映画ザ・コーヴについて「差別、偏見に満ちており、血の海となるような手法も数年前からやっていない」と反論した[84]。
- 三軒町長は、「科学的根拠に基づいて適法に行っている」とし[85]、「価値観の違いは明確。意見の行き違いは交わることはない」と反論した[82]。
- 漁野副町長は「食文化や風習を尊重し合うべきだ」と反論した[72]。
- 三原議長は、「シー・シェパードはいつも一方的な価値観を押しつけてくる。イルカは魚でないと言うが、こちらは資源と考えている」と反論した[78]。
- 意見交換会後の記者会見
- シーシェパードのウェストは、「伝統や文化が重要なのは分かるが、イルカ漁や捕鯨は野蛮。やめるまで活動する」と語った[82]。
- 「地域の食文化や習慣について不毛な意見交換を続ける気はない」[82]、「小型鯨類の漁業者は、今後も法律を順守しながら漁業を続ける」という三軒町長のコメントが読み上げられた[79]。
- 三原議長は、「エコテロリストとして基本的に考えは変わっていない」とシーシェパードを批判し[79]、「(団体の)実態が理解できた。これまでの食生活は今後も続けていく」と語った[86]。
- 意見交換会後に太地町漁協が発表した談話
- 「太地の伝統はいわれのない攻撃に屈することなく存続する」とし、「うそのシナリオで、世間の人々に誤った認識を持たせ続けようとしている」とシーシェパードを非難し、「太地の人々は団結しており、攻撃は成功しない」などとする談話を発表した[81]。
- 2011年
- 12月、シーシェパードの支援者でオランダ国籍のアーウィンマルコピーターアド・フェルミューレンが、ハナゴンドウ搬送の警備にあたっていた太地町在住の男性に暴行を加えたとして和歌山県警に逮捕された。フェルミューレンは立ち入り禁止区域の堤防に無理やり侵入しようとし、これを止めようとした男性の胸を突くなどして暴行したという[87]。翌2012年2月、和歌山地裁は被害男性の証言は信用できないとしてフェルミューレンに無罪判決を言い渡し[88]、確定した[89]。
逮捕歴
1979年7月、ポール・ワトソンはポルトガル沖でシーシェパード号で体当たりした際、捕鯨船シエラ号の42名の乗組員の生命を脅かし、また、定員をはるかに下回るたった3名の乗組員でシーシェパード号を出航させた容疑でポルトガル当局に逮捕された[14]。
活動の手法
懸賞金
シーシェパードは、クジラ、アザラシ、サメなどを殺害した者を逮捕・有罪に導く情報や環境保護活動家の殺人事件解決に導く情報提供に対して、最大25,000アメリカドルの懸賞金を出すとしている[90]。
共同密漁取締
シーシェパードは南米エクアドルのガラパゴス諸島で、現地の海保当局と共同で密漁取締を行ってきた[91]。2011年、ミクロネシア・パラオのジョンソン・トリビオン大統領が、サメの密漁船対策にシーシェパードの支援を取り付けたと報道されたが、後にトリビオンが翻意し支援は反古になった[92]。
メディアを駆使した資金集め
シーシェパードは、活動資金の大半を各界の著名人をはじめとする支持者や支援企業からの寄付で賄っており、2010年度の収入1,140万米ドル(約8億7,600万円)のうち84%は個人からの寄付で、残りはTシャツなどの商品販売で得ているという[93]。日本の捕鯨やイルカ漁を妨害することによって寄付収入を増やし、それを元手に2009年以降抗議船2隻、撮影用ヘリ1機、攻撃用ゴムボート少なくとも4艘を購入するなど設備増強を行った[94]。
2008年から北米地区で毎週金曜日のゴールデンタイムにアニマルプラネットで放映されている『クジラ戦争』(en:Whale Wars)は、シーシェパードの活動を記録したドキュメンタリー番組であり、アニマルプラネット歴代2位の視聴率を稼ぎ出す人気番組に成長した[95][96]。シーシェパードは、同番組を通じて飛躍的に知名度を上げ、同番組は支持者や寄付者を増やすための中核的な宣伝媒体となった[96]。そのため、日本の捕鯨やイルカ漁を「食い物」(農林水産省幹部)にして、寄付金収入を増大させてきたという批判がある[96]。2011年、日本政府は南極海調査捕鯨の中止を決めたが、これにはシーシェパードに肩すかしを食らわせ、これ以上の宣伝用の光景を撮らせることを防ぐことによって経済的な打撃を与えたいという日本側の隠れた狙いがあると報道された[96]。クジラ戦争にはこれ以外にも、危険な妨害行為を伝えながらシーシェパードの反捕鯨プロパガンダを一方的に紹介しているという批判や[95]、同団体幹部が狙撃されたシーンなど、捏造ややらせ演出が指摘されている[96][97]。一方、米国のメディアでは「捕鯨をめぐる賛否にかかわらず視聴者を楽しませるだろう」(ロサンゼルス・タイムズ)、「スリル満点のアドベンチャー番組」(ボストン・ヘラルド)などと番組を好意的に紹介するものもある[95]。抗議船には、ハリウッド女優のダリル・ハンナやミシェル・ロドリゲスも乗船した[98][99]。日本での放送予定はないが、米国以外ではオーストラリアなどの反捕鯨国で放送されている[95]。
ピーター・ベスーンの判決が言い渡されたことについて、ポール・ワトソンは「ニュージーランドに帰ったら、英雄として迎えられるだろう。裁判は日本の捕鯨の違法性を世界に知らせる宣伝効果があった」とし[100]、「裁判はかえって反捕鯨活動を力強いものにした」と述べ、注目されたことで支援金が集まり、抗議船の装備改良が可能になったほか、メンバーの士気も上がったと主張した[101]。
日本人メンバー
マリコ、マイと名乗る日本人メンバーがおり[102]、「盲目になっているビジネスマンと地球の奇跡の美しさを感じていない人たちの目を覚まさせるには、こういう団体があってもいいと思う」などとしている[103]。
日本人乗組員はマスクをして顔が分からないようにしていたが、イズミ・スティーブンスと親川久仁子の二人はシーシェパードの乗組員であることを公に認めた初の日本人メンバーであり[104]、親川は、日本テレビの取材に対して、日本が世界の規約に反する違法捕鯨を行っているとし、暴力でぶつかり合う様な場面もいとわず、地球やクジラを守るために命を落としてもかまわないと語った[102]。
所有船
シーシェパードは、自らが「ネプチューンの海軍(Neptune's Navy)」と呼ぶ[105]、3隻の船舶と小型艇を運用している。
現役
- ブリジット・バルドー号(旧 ゴジラ号 (gojira))
- 高速船。シー・シェパードが運用する船舶としては初のオーストラリア船籍である。航行速度は24ノット、全長は35メートル[106]。元々は1998年に建造されたケーブル・アンド・ワイヤレス・アドベンチャラー(Cable and Wireless Adventurer)号で、アースレース(Earthrace)号に破られるまで、74日間世界一周の記録を保持していた高速トリマランである(なおアースレース号は、後にシー・シェパード抗議船アディ・ギル(Ady Gil)号となった)。2010年にシー・シェパードが400万ドルで購入し、2010/2011年シーズンより捕鯨妨害活動に参加している。同じトリマラン(三胴船)であるアディ・ギル号と姿は似ているが、全長で1.5倍、排水量で3倍ほど大きい。なお船名は怪獣ゴジラのアルファベット記載として一般的なGodzillaではなく、日本語風ローマ字にしたGojiraである。ちなみに、本家ゴジラの著作権を保有している東宝には、一切届け出などは出されていないという。余談だが、映画『三大怪獣 地球最大の決戦』や『ゴジラVSデストロイア』でゴジラが鯨を捕食するシーンがあったことを、中沢健が自らのブログで指摘している。2011年5月、東宝の警告を受けて、女優で支持者でもあるブリジット・バルドーの同意を受け、船名が変更された。[107]
- スティーブ・アーウィン号 (steve irwin)
- 高速船。2007年1月南極海で、日本の調査船の調査捕鯨を妨害(彼らはリヴァイアサン作戦 "Operation Leviathan" と呼んでいる[108])に参加したのが初任務である[109]。2007年2月19日付でイギリスから船籍剥奪を通告されているが、その後すぐ、オランダ船籍を取得したとのことである[110][111]。Robert Hunter の名の由来は、カナダの環境活動家で2005年に亡くなった、ロバート・ハンター。この船は、取材中にエイに刺されて死んだテレビタレント兼活動保護家のスティーブ・アーウィンの妻の許可を得て、2007年12月にスティーブ・アーウィン号に改名した。従って、2007年2月(ロバート・ハンター号)と2008年1月(スティーブ・アーウィン号)に日本の調査船を襲撃した船は同一船である。2007年の襲撃時には塗装は薄い青緑であったが、2008年の襲撃時には船名の変更とともに全面黒色塗装されている。排水量1017トン。
- ボブ・バーカー号 (bob barker)
- 元ノルウェーの捕鯨船。米国の有名司会者ボブ・バーカーによる500万ドルの寄付により購入され、彼の名前を冠する。後部デッキに小型ヘリコプターを搭載できるのが特徴。2009/2010年シーズンより反捕鯨活動に参加。調査船への体当たり、またトーゴ船籍であるにもかかわらずノルウェー国旗を掲げるなど不法行為を繰り返し、2010年2月にはトーゴより船籍を剥奪され無国籍船となった。その後オランダ船籍を取得した[112]。
退役
- シーシェパード1世号(Sea Shepherd I)
- イギリス船籍の元トロール船。全長68メートル、排水量785トン[14]。1979年夏、ポルトガル沿岸で捕鯨船シエラ号に体当たりし大破させた。翌年1月、賠償金代わりに押収されそうになったため、ポルトガル海軍が保管中の同船をポール・ワトソンが自沈[113]。
- シーシェパード2世号(Sea Shepherd II)
- イギリス船籍の元トロール船。全長55メートル[114]、排水量658トン、1962年建造[115]。1982年、ハワイから出航して長崎県壱岐のイルカ漁を妨害する計画を立てたが、ポール・ワトソンは漁民のほうに同情が集まり、訴えを聞いてもらえなさそうだと断念した[116]。1983年、アザラシ漁を妨害した際に王立カナダ騎馬警察とカナダ沿岸警備隊に拿捕、押収された。ポール・ワトソンはこの取り扱いは不当だとカナダ政府を訴え、1985年に取り返し[114]、エチオピアに援助物資を届けた。1990年、北太平洋で流し網漁を行っていた二隻の日本漁船に体当たりし、流し網を巻き取る装置を破壊した[117]。1992年、日本の流し網漁の妨害活動の帰りに突如カナダ税関当局による査察を受け、7,500ドルの水先案内料を請求されたが、ポール・ワトソンが支払いを拒否。出航を禁じられ、やむなく5,000ドルで売却された。2004年、新たな所有者は船を再利用することなくバンクーバー島に遺棄し行方をくらませため老朽化。このまま沈むと深刻な環境汚染を引き起こしかねないため、カナダ当局によってスクラップにされた[114]。
- エドワード・アビー号(Edward Abbey)
- サイリーニアン号(Sirenian)
- 元はアメリカの沿岸警備隊巡視艇として1955年に建造された船。用途廃止された後に1991年に同団体が購入。1999年秋にシアトルで捕鯨推進派とのにらみ合いの際破壊されるが、修理・オーバーホールされた[118]。sirenianとは英語で「ジュゴン目」という意味。
- ホエールズ・フォーエバー号(Whales Forever)
- ファーリー・モワット号(RV Farley Mowat)
- 元はノルウェーの漁業調査船として1956年に建造された船。全長54メートル、排水量657トン、1400馬力[118]。1996年に同団体が購入し、シーシェパード3世号と名づけた。1999年にオーシャン・ウォリアー号に改名し、2002年から現在の名前となった。船の名の由来はカナダのナチュラリストで作家のファーリー・モワット。2006年12月に一度、ベリーズから船籍を剥奪されているが、その後、オランダ船籍を取得した[110][111]。2007年7月には、カナダのモホーク族の船籍も得た[119]。2007年2月にロバートハンター号(現スティーブ・アーウィン号)とともに、日本の調査船を襲撃した。このときのファーリー・モワット号の塗装は黒色であった。2008年4月12日、カナダ沿岸で商業アザラシ猟の妨害活動中に、沿岸警備隊により拿捕。その後は競売にかけられ、シーシェパードの手を離れた。
- アディ・ギル号(MY Ady Gil)
詳細は「アースレース」を参照
影響
批判・非難
シーシェパードは水産庁や日本鯨類研究所(日鯨研)から「テロリスト集団」と名指しで非難されている[8]。日鯨研スタッフで、スポークスマン的存在を務めるニュージーランド人、グレン・インウッド(Glenn Inwood)はシーシェパード代表のポール・ワトソンを批判して、メンバーに対してカルト教団の教祖のように振る舞い、クジラを救っていると信じ込ませ[120]、オーストラリアやニュージーランドのメディアに対しては「日本の調査捕鯨は違法」だとウソをついて「日本という『敵』をつくり、正しい情報を知らない反捕鯨国の住民から資金を集めている」と語った[121]。2011年12月、日鯨研は、シーシェパード本部のあるワシントン州の連邦地裁に調査捕鯨の妨害差し止めと船団への接近禁止を求める訴訟を起こした[122]。2012年2月、連邦地裁は、日鯨研による妨害差し止めの仮処分申請を棄却した[123]。
アメリカ連邦捜査局(FBI)の国内テロ対策課長を務めたジェームズ・ジャーボーは、2002年2月に下院公聴会で行った証言において、エコテロリズムとは(1)自然環境に影響する行為(2)環境政策上の対立(3)社会へのみせしめ効果を動機として対象を選定し、「被害者、または資産に対して暴力的な犯罪、またはその脅迫を行う行為」と定義し、1977年にシーシェパードが結成されて以来、世界中で起きるようになったとしている[9][10]。一方、ポール・ワトソンによると、2009年、バージニア州クアンティコにあるFBIの訓練施設FBIアカデミー(FBI Academy)で講演を行ったことがあり、捜査官からシーシェパードが一線を踏み外さないよう忠告を受けたという[124]。
カナダ安全情報局が作成したテロリズムに関する文書で、アザラシ漁や材木伐採の妨害活動を行っているポール・ワトソンとシーシェパードのことが言及された[11]。2008年、アザラシ漁を妨害しようとして抗議船と乗組員が拘束された際、ニューファンドランド・ラブラドール州首相のダニー・ウィリアムズ(Danny Williams)にポール・ワトソンは「最低最悪な人間」で「テロリスト」だと非難された[12]。
国際捕鯨委員会(IWC)では、1986年、アイスランドの捕鯨船を撃沈したことを理由にシーシェパードのオブザーバー資格を剥奪した。また、2008年には、日本の調査捕鯨に対する妨害活動を理由にシーシェパードを非難する議長声明を全会一致で採択した[125]。
2010年、ダライ・ラマは、東京での記者会見で、シーシェパードに対し「(暴力的な)行動をやめるよう書簡を出した」と明らかにし、過激な活動を批判した[126]。
2010年2月24日、インターナショナル・ヘラルド・トリビューンは、反捕鯨諸国の偽善性を指摘しながら異例の厳しさでシーシェパードを非難したフィリップ・バウリングのコラムを掲載した[127][128]。
オーストラリア国内にも捕鯨問題とシーシェパードは切り離して考えるべきだという意見があり、豪紙オーストラリアンは2010年1月の記事でシーシェパードの活動を傲慢であり理不尽だと非難し、マスコミにシーシェパードを奨励してはならないと呼びかけた[129][130]。また、2011年1月、オーストラリア首相のジュリア・ギラードは日本の調査捕鯨の妨害行為を行う同団体に対して警告を発した[131]。
シーシェパードは、グリーンピースの創設にかかわったポール・ワトソンが、1977年に脱退して設立した反捕鯨団体であるが、グリーンピースの非暴力活動の方針を無視するなどしたため、グリーンピースから脱退を促した経緯があり、グリーンピースはシーシェパードと「一切関係がない」と言っている[132]。グリーンピース・ジャパン元事務局長の星川淳によると、グリーンピースがここ2年間南極に抗議船を出していないのは、シーシェパードと同一視されるのはグリーンピースの活動にとって逆効果だからだという[133]。日鯨研の石川創もグリーンピースが「過激団体と関係ない」と主張していると指摘した[134]。
フィリス·ウィートリーは、どのように多くの子供を持つとした
2011年、ユーチューブでシーシェパードの活動家を痛烈な言葉で批判してきたテキサス親父ことトニー・マラーノは、和歌山県太地町を訪れ、三軒一高町長と面談し、「海に囲まれた日本がなぜ捕鯨をしてはいけないのか」と疑問に思ったのがシーシェパード批判のきっかけになったと語った[135][136]。
2012年3月、マルタの政治家はクロマグロ漁を行っている漁師から賄賂をもらっているとポール・ワトソンが非難したことに対して、マルタ首相ローレンス・ゴンジは名誉毀損でワトソンとシーシェパードを訴えると言明した[137]。
支持・支援
シーシェパードは2008/2009シーズンの調査捕鯨終了時、毎日新聞の取材に対し、年間活動資金を約350万ドルと回答した[138]。ほとんどは支持者、支援企業からの寄付であるという[138]。シーシェパードのウェブサイトには、日本にも出店している米アウトドア用品メーカー・小売業者パタゴニア社、旅行ガイドブックの業界で世界一のロンリープラネット社、豪州のビール会社など30社が「スポンサー」として名を連ねている[138][139]。パタゴニア社は、シーシェパードの活動に関して「海洋の生態系を保護し保存するためのアプローチの一つとして、直接行動という手段に出ていることも承知しています」との立場を表明したが[140]、パタゴニア日本支社は資金提供について「時期、金額ともに公表できない」と毎日新聞の取材に回答した[138]。また、イギリス・ロンドンのラッシュはイギリスでチャリティー商品を販売し、売り上げ約400万円をシーシェパードに寄付したと報道されたが、ラッシュジャパンによると同社はシーシェパードを支援していないという[141]。
オーストラリアでは、イアン・キャンベル元環境大臣(Ian Campbell)が支持を表明しているほか[142]、緑の党が同団体の活動を支えている[143]。
国際捕鯨委員会(IWC)では、2008年、元副委員長のホルスト・クラインシュミット(Horst Kleinschmidt)が同団体にアドバイザーとして加入した[144]。
米人気テレビ番組の元司会者ボブ・バーカーは500万ドル(約4億7千万円)を寄付。シーシェパードは彼の名を冠した船を所有している[142]。
子供たちの間で肥満を減らすための努力
- シーシェパードに支持者とされた著名人
- ダライ・ラマ本人は2010年、東京での記者会見で、シーシェパードに対し「(暴力的な)行動をやめるよう書簡を出した」と明らかにし、過激な活動を批判した[146]。
- 報道された著名人の支持者
- 報道された著名人の元支持者
- 団体・企業の支持者
- オーストラリア緑の党・タスマニア緑の党 - オーストラリアの政党 [160]
- パタゴニア - アメリカのアウトドア用品等の製造販売を行う企業[161] -米国本社の環境助成金プログラムを通じて、1993年と2007年の2回、計14,000ドル寄付しただけで、以後、現時点まで助成は行ってないとしている[162]。
- ラッシュ - イギリスのバス用品、石鹸、美容用品を取り扱う企業[163]
- クイックシルバー - アメリカのサーフィンやスノーボード等の製造販売を行う企業[164]
- Bluetongue Beer - オーストラリアのビール製造企業[161]
- 2008年、コカ・コーラのオーストラリア現地法人Coca-Cola Amatilがシーシェパードのスポンサーになることを検討していると報道された[165]。
フィクション・大衆文化
- アメリカのアニメ『サウスパーク』のエピソード。シーシェパードの南氷洋上での反捕鯨活動を取り上げたアニマルプラネットの人気番組『Whale Wars』をもじったタイトルで『鯨娼婦』の意。『Whale Wars』におけるシーシェパードの演出手法が日本とともに揶揄された。第13シーズン第11話(2009年11月28日放送)。
- 浜岡賢次の漫画。28巻にポール・ワトソンそっくりな男がパロディ・キャラクターとして登場し、「クジラ食うな!」と叫びながら船の上から投石した。
脚注
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- ^ "シー・シェパード事件 反捕鯨 傷害は否認 元船長初公判 艦船侵入認める". 東京新聞. (2010年5月27日). "米国の環境保護団体「グリーンピース」を脱退したポール・ワトソン氏が、前身団体を経て1981年、海洋生物の保護を目的に設立した米国の団体。「直接行動」を掲げ、所有する船で捕鯨船に体当たりして沈没させるなど、過激な活動で知られる。国際捕鯨委員会(IWC)は2008年3月、SSを名指しして妨害行為を非難している。"
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関連書籍
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- Watson, Paul (1993). Earthforce! An Earth Warrior's Guide to Strategy. Chaco Press. ISBN 978-0961601959.
- Watson, Paul (1994). Ocean Warrior: My Battle to End the Illegal Slaughter on the High Seas. Key Porter Books. ISBN 978-1550135992.
- Watson, Paul (2002). Seal Wars: Twenty-Five Years on the Front Lines With the Harp Seals. Firefly Books. ISBN 978-1552977514.
- 佐々木正明 『シーシェパードの正体』 扶桑社、2010年。ISBN 978-4594062149
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