2012年5月15日火曜日

科学ニュースの森


背景:
ヒトは他の動物に比べて長い寿命を持つが、高齢期には身体や脳の衰え、癌などの疾患に悩まされることになる。これらは長生きした動物ならば常に起こってしまうことであるが、中には例外も存在する。

要約:
ハダカデバネズミはアフリカの角周辺の地中に生息するげっ歯類であり、25~30年もの長い寿命を持つ。さらにそれほど長い寿命を持ちながら、活動性、骨の健康、繁殖能力、認知能力などの老化による衰えは殆ど見られず、癌を患った個体もこれまで発見されたことがない。そのため、寿命や生物学的な研究を行なうためのモデル生物として利用されている。


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この度、テキサス大学・サンアントニオ衛生科学センター・バーショップ研究所の研究チームによって、NRG-1と呼ばれる脳の正常な機能に必要なタ ンパク質を、寿命の長いげっ歯類ほど小脳内に維持することができていることが分かった。ハダカデバネズミでは、その量は発達段階から成熟後までほとんど変わることはなかった。

バーショップ研究所には、アメリカ内で最も大きなハダカデバネズミのコロニーが存在する。そこでは2000匹のハダカデバネズミが、多湿な環境でチューブやケージによって作られた巣で、自然界と変わらぬ生活を送っている。


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彼らはハダカデバネズミの他に、ネズミやモルモット、メクラネズミを含む6種のげっ歯類も調査対象とした。6種のげっ歯類は最大3~19年の寿命を持ちそれぞれの年代で調査を行い、ハダカデバネズミでは産まれて1日目から26年目までの調査を行なった。

小脳は運動や平衡感覚に大きな役割を果たしているため、彼らは老齢でも健康に過ごすためにその中で働くNRG-1が重要な役割を果たしているだろうと仮説を立てた。そしてそれぞれのげっ歯類を調査したところ、長命なげっ歯類ほどNRG-1の量を保つことができ、ハダカデバネズミが最も大きく安定した量を維持していた。


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これまでハダカデバネズミの生理学的な研究はよく行なわれており、肝臓、腎臓、筋肉内などのタンパク質がよく維持されていることは示されていた。今回の研究は、脳内で重要な役割を持つタンパク質が、種ごとにどれほど維持されているのかという初めての研究となった。

研究を率いるRochelle Buffenstein博士によると、今回の研究でNFG-1の量と寿命に直接的な関連が見られたため、寿命の研究において新たな焦点となるだろうという。またこの事実は、酸化ダメージの量ではなく自身を守る機能が寿命を決定しているという、近年の発見を裏付けることにもなる。

この研究を直接ヒトへと当てはめることはできないが、神経細胞の維持に対するNRG-1の役割など、様々な応用例が考えられるだろう。

ハダカデバネズミ


元記事:
Long-Lived Rodents Have High Levels of Brain-Protecting Factor
encedaily.com/releases/2012/05/120510132711.htm

参照:
Yael H. Edrey, Diana Casper, Dorothee Huchon, James Mele, Jonathan A. Gelfond, Deborah M. Kristan, Eviatar Nevo, Rochelle Buffenstein. Sustained high levels of neuregulin-1 in the longest-lived rodents; a key determinant of rodent longevity. Aging Cell, 2012; 11 (2): 213 DOI: 10.1111/j.1474-9726.2011.00772.x



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